2015-01-12 14:28:00

教皇、駐バチカン外交団に新年の挨拶


教皇フランシスコは、12日、バチカン駐在の外交団と新年の挨拶を交換された。

現在、バチカンと外交関係のある国は180カ国、これにマルタ騎士団と欧州連合が加わる。この他、パレスチナ自治政府も特別使節として代表を派遣している。また、国際組織としては、バチカンは国連のオブザーバーであるほか、国連関連の7つの組織のメンバー、他の8つの組織のメンバー、5つの地域組織のオブザーバーを務めている。

バチカン宮殿の王宮の間で行われたこの集いで、教皇は最近の世界情勢を展望しつつ、皆が心に強く望む「平和」をテーマに講話を行われた。

主の降誕の夜を思い起こされた教皇は、幼子イエスを取り巻く風景には、神の賜物として告げられた平和がある一方で、神の御子を拒否する人々のかたくなな心があると指摘。

生まれてすぐに外の寒さに置かれ、まぐさ桶に寝かされた神の御子イエスのように、現代も「切り捨ての文化」のために拒絶され、疎外されている多くの兄弟姉妹たちがいると教皇は述べ、人間だけでなく、神をも切り捨てるこの文化から緊張と闘争に苦しむ人類が生まれたと話された。

メシアとして生まれた幼子の存在を脅威に感じ、ベツレヘム中の幼子たちを殺害したヘロデ王のエピソードを引用しながら、教皇は、昨年12月のパキスタンでの学校襲撃事件の無実の犠牲者たちとその遺族のために祈ると共に、社会を分裂させ、暴力と死を生む悲劇として、数日前パリで起きた新聞社襲撃事件を心に留められた。

教皇はこうした多くの悲劇を前に、人間は自由な状態から、流行や、権力、金、さらには逸脱した形の宗教の奴隷になってしまうと述べ、現代の様々な奴隷制は、腐敗した心と、善を行ない平和を求める力の欠如から来ていると話された。

様々な形と大きさをもって「散発的な世界大戦」のように各地に広がる多くの闘争に触れた教皇は、特にウクライナ、また聖地や、シリア、イラクをはじめとする中東の現状を見つめられた。

中東で脅威となっている原理主義者らによるテロについて、教皇は宗教原理主義は人間を軽んじるだけでなく、神をも拒否し、神を単なるイデオロギー的な口実としてしまうと非難された。

そして、これらの不当な暴力と迫害がキリスト教徒はもとより少数派の民族や宗教の信者たちを苦しめていることに対し、国際社会が一致してこれらの人々の保護と平和の構築に取り組むことを希望された。

教皇はまた、同様の残忍な行為として、ナイジェリアにおける子どもたちや若い女性たちに対する暴力や誘拐を強く非難。リビアや中央アフリカ、南スーダン、アフリカ角地帯、コンゴ民主主義共和国での内戦にも憂慮を示された。

さらに、これを機会に、教皇は女性への暴力に対し、女性の尊厳を侵害する犯罪として、強い抗議を示された。

アフリカについては、教皇はリベリア、シェラレオーネ、ギニアに広がるエボラ熱にも言及。患者に対する人道的支援と、感染を終結させるための取り組みを国際共同体に訴えられた。

教皇はこの他、移民問題、家庭の重要性、若者や、就業の問題にも触れられた。

若者について、教皇は昨年8月に韓国で行われたアジアン・ユース・デーでの青年たちとの出会いを振り返り、わたしたちの精神価値を未来の世代にどのように伝え、彼らのためにどのような社会を準備すべきかを考えるよう招かれた。

そして、教皇はスリランカとフィリピンへの司牧訪問で再びアジアを訪れる喜びを述べると共に、朝鮮半島の二国が兄弟として対話を取り戻すことを望まれた。

教皇は、昨年のアルバニアやトルコ、聖地訪問で得た人々との出会いや宗教対話について言及すると同時に、米国とキューバの国交正常化への決断にも大きな喜びを表明。グアンタナモ収容所の閉鎖に向ける米国の努力にも満足を示された。

「1945年8月6日、人類は史上最も恐ろしい悲劇を見ることになった。これまでにない新しい方法で、人間の破壊力がどこまで到達するかを、世界は知ろうとしていた」と、教皇は原爆の脅威に言及。

「第2次世界大戦のこの悲劇の灰の中から、新しい対話と出会いを求めた国々の間で国連が生まれた」と、教皇は国連が今年創設70周年を迎えることを紹介。

「平和は、戦争の終結よりも先に、人の回心から生まれる」と述べた教皇は、世界各国の大使らに平和へのたゆみない努力を励まされた。








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