2014-11-25 18:42:38

教皇、ストラスブールで欧州議会を訪問


25日、教皇フランシスコは、フランス・ストラスブールを訪問された。

これは教皇フランシスコの海外訪問としては5回目となるもので、教皇はこの機会に同地に本部を持つ欧州議会そして欧州評議会でそれぞれ講演を行われた。

同日午前、ストラスブールに到着された教皇は、まず欧州議会を訪れた。マルティン・シュルツ議長らに迎えられた教皇は、会議場でヨーロッパ28カ国の議員らを前に話された。

1988年にヨハネ・パウロ2世がストラスブールに欧州議会を訪問して以来、四半世紀以上、この間大きく変化したヨーロッパと世界の状況を教皇は回想。互いにつながり、グローバル化した今日の世界において、欧州連合がますます広がり一定の影響力を持つ一方で、「ヨーロッパ中心主義」は薄れつつあり、欧州は自分たちを「年老いて」「複雑化」したものとして、時に冷めた、懐疑的な視点で眺めていると指摘された。

こうしたヨーロッパの市民に対して、教皇は司牧者として、困難こそ一致を強める力となるという希望と励ましのメッセージをおくりたいと述べられた。

欧州連合を築いた父たちは、分裂の克服、平和構築、ヨーロッパ大陸の市民間の交流を推進するための相互協力の未来を確信し、それを望んできたが、この野心的な計画には不変の尊厳をそなえる人間への信頼があったと教皇は強調。

人権の推進は、欧州の歴史そのものであると共に、ヨーロッパと世界の人々の尊厳を守るという願いは今日も欧州連合の中心課題であり続けていると話された。

こうした中、教皇はまた、社会や人類という環境から離れ、権利のみで義務を伴わない、行き過ぎた「個人の権利」を主張する風潮が見られることを危惧され、人権の概念を誤解し、それを濫用する矛盾をおかさないよう注意を促された。

では、どのようにして若者たちに未来の希望を与え、一致・平和・創造性・権利の尊重・義務の自覚といったヨーロッパの偉大な理想を信頼をもって追い続けることができるのか、という問いに対し、教皇はバチカン宮殿にあるラファエロのフレスコ画「アテネの学堂」を答えとして示された。

古代の学者たちが描かれたこのフレスコ画の中心にはプラトンとアリストテレスがいるが、前者は理想郷である天を指差し、後者は手を前に差し出しながら具体的な現実の世界を指していると教皇は解説。

超越的世界、すなわち神を指す「天」と、状況や問題への実際的な対応力を指す「地」、この天地が出会い続けるのがヨーロッパとその歴史のイメージであると話され、この2つの要素を再発見することに欧州の未来はかかっており、特に命の超越性に対して自らを閉ざすならば、ヨーロッパは少しずつその魂とヒューマニズム精神を失っていくであろうと警告された。

世界の各地でキリスト教徒をはじめ、宗教的少数派の市民が迫害と暴力にあっている現実を直視された教皇は、欧州連合のモットー「違いにおける一致」を思い起こされ、異なる構成要員がそれぞれの違いを豊かなものとして生きられる、家族のような一致した社会を理想として示された。

教皇は欧州が大切にすべき課題として、家族、教育、労働、環境保全、移民などの問題を挙げられ、特に移民問題について、欧州市民の権利を守ると同時に、移民の受け入れを保証できるような法制化に努力し、地中海を巨大な墓場とすることがないようにと希望された。

「キリスト者は世界において、身体の中の魂のような存在である」という2世紀の名の知れぬ著者の言葉を教皇は引きながら、「魂の仕事は身体を支え、意識と記憶であり続けること」「ヨーロッパとキリスト教を結ぶ2千年の歴史には、争いや過ちがなかったわけではないが、それは常に善を築こうとする情熱に動かされていた。この歴史は、まだ書き続けられるもの」と説かれた。

「ヨーロッパを経済のまわりではなく、人間の聖なる価値のもとに共に築く時が今やってきました」と述べた教皇は、希望と共に現在を生きるために、勇気をもって過去を受け入れ、信頼をもって未来を見つめるよう、教皇は欧州議会の議員らに呼びかけられた。

この後、教皇は欧州評議会を訪問。同日夕方、バチカンに戻られた。








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